2020年3月29日日曜日

音と光のオクターブ

周波数とオクターブ


ある音程の周波数の2倍、4倍、1/2倍、1/4倍(2の±n乗倍)の周波数を持つ音、
たとえば440Hzの音と880Hz、1760Hzの音は、いずれも西洋音階の「ラ(A)」であり、
一般的に同じ種類の音階の音、しかし1オクターブ違う音、としてヒトは認識する。

これはひとつの連続的に変化する物理量を認識する方法として、
とても神秘的なものではないだろうか。

たとえば重さが2倍、4倍のものを、「同じ種類の重さだがオクターブ違う」と感じるようなものだ。


色相環と波長


一方、波長がおよそ380nm~780nmの電磁波を、ヒトは光として感じ、
波長の違いを色相の違い、たとえば波長の最短の色は紫、最長の色は赤、
として知覚することができる。

それ自体が非常に神秘的なものだが、それはここでは考えない。

ここでは、色相環の神秘についてとりあげる。

紫と赤は、可視領域の両端に位置するまったく別の色であるにも関わらず、
ヒトは両者を色相環のなかで隣り合う色として知覚し、
本来断絶している両端の波長の色が、連続的につながっているように認識している。

この色の知覚の神秘は、オクターブの神秘に通じているのではないだろうか。

そして、ヒトの近くできる電磁波の波長域がもっとずっと広かったら、「オクターブ違いの同じ色」という知覚が生まれる可能性もあるのではないだろうか?

そんな妄想を、図解でまとめてみた。

音の周波数


「ドレミファソラシド」、の最初と最後の「ド」は、
同じ「ド」でも1オクターブ違い、周波数では2倍違う関係にある。

音階の感覚は、連続的に変化しつつ、らせん状の周期性を持つものとして知覚される。

図の中のA0~A7までの「ラ」は、ピアノの88鍵に含まれるすべての「ラ」である。



電磁波の周波数


可視光は、波長(周波数)の違いが、色相の違いとして知覚される。
可視領域の両端は、波長(周波数)でほぼ2倍の関係にあり、
また両端がつながった円環(=色相環)として知覚される。
波長(周波数)がほぼ2倍であることと、両端がまるでオクターブ違いの音のように
ほぼ同じ色として知覚されることに、関連はあるのだろうか。



光のオクターブ(妄想)


もしも可視領域がずっと広かったら、音階の知覚と同じように、
何オクターブ分もの色が識別できる、ということになるのだろうか?



あまりに広いレンジの物理量を識別する必要があるときに、
オクターブのような知覚の仕方が進化的に生まれることは大いにありうるとも思われる。


もっとも、数百テラHzという超高速の振動数をもつ2つの光の波長が、
2の±n乗倍の関係にあるかどうかを知覚できるような生体センサーがありうるとは、
ちょっと考えにくい。

なので、この妄想がどれだけ真実味をもつのはか、よくわからない。

もしも光のオクターブが感じられたら、それは一体どんな感覚なのだろうか?

宇宙のどこかに、幅広いレンジの光を識別できる生命体がいて、
光のオクターブ感覚を持っていたら、それがどんなものか、
それが彼らの文化にどんな影響を与えているのか、ぜひ教えてもらいたい。

2020年3月23日月曜日

冬の星座までのディスタンス[改訂版]

一年のうち最も明るい星が集中する、美しい冬の星座。
それぞれの星までの距離を可視化してみた。
※より最近のデータを反映したものにバージョンアップ済み(2020/04/19)


言わば、これぞ星空のディスタンス。

ここで描いたのは、4等星台までの星で、
大都市を少し離れればなんとか見えるくらいの明るさだ。

2020年3月3日に亡くなった戯曲作家の別役実いわく、
星々は、その輝きよりも、そこまでの空間によこたわる距離こそが
夜空を見上げるに足るものにするのだという。
原文はおぼえていないがそんな趣旨だったはずで、まったくそう思う。

人間の立体視では、残念ながら星までの奥行きを感じられない。
そこでこの図では、ESA(ヨーロッパ宇宙機構)が打ち上げた
ヒッパルコス衛星によりとらえた「年周視差」のデータを用いて、
星までの距離をエクセルで計算し、色と数字(距離の単位=光年)で示した。

”年周視差”については、
がわかりやすいので是非ご覧ください。

※最初に投稿した2020年3月23日時点では、ヒッパルコスカタログの1997年版を使用していたが、2020年4月19日に2007年版を用いたものに修正した。たとえばベテルギウスの年周視差は、1997年版の7.63ミリ秒から2007年版では6.55ミリ秒に修正され、これに基づく距離は 428光年 → 498光年となる。しかし、2008年に超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を使用して行われた測定では、ベテルギウスの年周視差は5.07 ± 1.10ミリ秒、距離は642 ± 147光年(197 ± 45パーセク)という結果が示され、Wikipediaでもその値が基本データとして採用されている。そのため、ここで紹介する図でも、ベテルギウスに関してはVLAによるデータを採用している。
なお、2017年には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)とe-MERLINによる観測では、年周視差4.51 ± 0.80ミリ秒および距離724(+111,−156)光年という値が得られている。(参考:Wikipedia「ベテルギウス」)


ちなみにTHE ALFEEが歌う「星空のディスタンス」の歌詞では、
正確には「星空の下の人間同士のディスタンス」を歌っており、
星までの距離は扱われていない。

下図は、最初の画像のうちいわゆる「冬の大三角」周辺をトリミングしたもの。
全天一の明るさを誇るシリウスが結構ご近所(8.6光年)にあり、
実際、この図に描いたすべての星のなかで、シリウスは最も地球に近い。

実際の冬の大三角の3つの星の実際の明るさは、次のようになる。

 冬の大三角/ベテルギウス:太陽の明るさの21,888(絶対等級-6.0)

 冬の大三角/シリウス:太陽の明るさの22.4(絶対等級1.5)

 冬の大三角/プロキオン:太陽の明るさの7.3(絶対等級2.7)

オリオン座の主だった星の中では、三ツ星の真ん中の星、
イプシロン星(アルニラム)が最も明るく、
太陽の明るさの66,225倍(絶対等級-7.2)となっている。
実視等級と絶対等級については、
をぜひご覧ください。


よく見ると、シリウスを筆頭にしたおおいぬ座は、
赤~紫色で示した、数千光年先の星が結構ふくまれている。

下の図は、オリオン座とおうし座の中心部をトリミングした。
オリオン座はおおむね遠距離の星が多い。
いわゆる三ツ星は、真ん中だけが他より倍以上も遠いので、
実際の空間では残念ながら団子三兄弟のようには並んでいなかった。

おうし座のアルデバランは67光年で、まわりのヒアデス星団(150光年前後)とは
別々のグループだということもよくわかる。