太陽光のうち、地球の大気を経由したものだけが月面にとどくことで、赤く染まっている。
その赤は夕焼けの色で、地球上のすべての日没地点の空を染めている赤だ。
地平線の下に沈んでしまった夕陽の残光は、そのとき遠く月まで届いて赤く照らしている。
月食の図解 (公転軌道を上から見た様子。距離と大きさの関係は滅茶苦茶) |
もしも赤く染まった皆既月食中の月面から地球を見てみれば、
赤く輝く大気のリングが見えるはずだ。
それは、いったいどんな風に見えるだろう?
上の想像図のような、月から見た「ダイヤモンドリング」は、
実際に平成21年2月10日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星、「かぐや(SELENE)」 が「半影月食」中に撮影している。
http://www.jaxa.jp/press/2009/02/20090218_kaguya_j.html このときは「半影月食」で、月が赤く染まるまでには至っておらず、
圧倒的な太陽光の下で、大気を通した赤い光は見ることはできなかった。
さらに「食」が進行して、太陽が地球の影にかくれると、どうなるだろうか。
皆既中の赤い月は、きっとこんな赤い地球大気のリングに照らされているのではないだろうか。
そして次の疑問。 皆既中の赤いリングは、どのくらい明るく見えるのか?
下の写真は、2011年12月10日の皆既月食の、皆既中に撮影したもの。
この皆既中の月の明るさは、オリオン座の明るい星々よりもずっと明るく見える。
その差はどのくらいだろうか?
皆既中の月の明るさを、オリオン座の左足にあるリゲル(0等星)との光度と比べて、
ザッと4等級(約22倍)として、-4等級と仮定してみる。
すると、満月(-12.7等級)にくらべて、8.7等級暗い(約800分の1の明るさ)ということになる。
太陽の直射日光(-27.6等級)が照らしている満月と、
地球大気を通った光が照らしている皆既中の月(X等級)との明るさに800倍の差があるとしたら、
月を照らしている光源にも、800倍の差があるはずだ。
X = -27.6 + 8.7 = -18.9
単純計算の結果、皆既中の月を照らす地球大気のリングの明るさは、-18.9等級になる。
これは、地球から見た満月の明るさ-12.7等級の100倍以上の明るさだ。
相当にいい加減な見積もりだけれども、皆既中の月から見る地球大気のリングは、
地球から見た満月より、少なくとも数十倍は明るく見えそうだ。
満月よりもずっと明るく輝く赤いリング。
ちょっと想像しずらいけれども、ステージ上で赤いスポットライトを浴びているような状況だろうか。
上は、地球大気リングと、満月の明るさと大きさの比較想像図。
太陽がどんどん欠けていって、
(太陽光よりはずっと弱いものの)まばゆく輝く赤いリングが天に現れる。
こんな光景が、月面では皆既月食のたびに
誰にも見られることのないまま、
きっと繰り返されている。