2020年3月23日月曜日

冬の星座までのディスタンス[改訂版]

一年のうち最も明るい星が集中する、美しい冬の星座。
それぞれの星までの距離を可視化してみた。
※より最近のデータを反映したものにバージョンアップ済み(2020/04/19)


言わば、これぞ星空のディスタンス。

ここで描いたのは、4等星台までの星で、
大都市を少し離れればなんとか見えるくらいの明るさだ。

2020年3月3日に亡くなった戯曲作家の別役実いわく、
星々は、その輝きよりも、そこまでの空間によこたわる距離こそが
夜空を見上げるに足るものにするのだという。
原文はおぼえていないがそんな趣旨だったはずで、まったくそう思う。

人間の立体視では、残念ながら星までの奥行きを感じられない。
そこでこの図では、ESA(ヨーロッパ宇宙機構)が打ち上げた
ヒッパルコス衛星によりとらえた「年周視差」のデータを用いて、
星までの距離をエクセルで計算し、色と数字(距離の単位=光年)で示した。

”年周視差”については、
がわかりやすいので是非ご覧ください。

※最初に投稿した2020年3月23日時点では、ヒッパルコスカタログの1997年版を使用していたが、2020年4月19日に2007年版を用いたものに修正した。たとえばベテルギウスの年周視差は、1997年版の7.63ミリ秒から2007年版では6.55ミリ秒に修正され、これに基づく距離は 428光年 → 498光年となる。しかし、2008年に超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を使用して行われた測定では、ベテルギウスの年周視差は5.07 ± 1.10ミリ秒、距離は642 ± 147光年(197 ± 45パーセク)という結果が示され、Wikipediaでもその値が基本データとして採用されている。そのため、ここで紹介する図でも、ベテルギウスに関してはVLAによるデータを採用している。
なお、2017年には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)とe-MERLINによる観測では、年周視差4.51 ± 0.80ミリ秒および距離724(+111,−156)光年という値が得られている。(参考:Wikipedia「ベテルギウス」)


ちなみにTHE ALFEEが歌う「星空のディスタンス」の歌詞では、
正確には「星空の下の人間同士のディスタンス」を歌っており、
星までの距離は扱われていない。

下図は、最初の画像のうちいわゆる「冬の大三角」周辺をトリミングしたもの。
全天一の明るさを誇るシリウスが結構ご近所(8.6光年)にあり、
実際、この図に描いたすべての星のなかで、シリウスは最も地球に近い。

実際の冬の大三角の3つの星の実際の明るさは、次のようになる。

 冬の大三角/ベテルギウス:太陽の明るさの21,888(絶対等級-6.0)

 冬の大三角/シリウス:太陽の明るさの22.4(絶対等級1.5)

 冬の大三角/プロキオン:太陽の明るさの7.3(絶対等級2.7)

オリオン座の主だった星の中では、三ツ星の真ん中の星、
イプシロン星(アルニラム)が最も明るく、
太陽の明るさの66,225倍(絶対等級-7.2)となっている。
実視等級と絶対等級については、
をぜひご覧ください。


よく見ると、シリウスを筆頭にしたおおいぬ座は、
赤~紫色で示した、数千光年先の星が結構ふくまれている。

下の図は、オリオン座とおうし座の中心部をトリミングした。
オリオン座はおおむね遠距離の星が多い。
いわゆる三ツ星は、真ん中だけが他より倍以上も遠いので、
実際の空間では残念ながら団子三兄弟のようには並んでいなかった。

おうし座のアルデバランは67光年で、まわりのヒアデス星団(150光年前後)とは
別々のグループだということもよくわかる。



2020年1月1日水曜日

地球から見た 天体の大きさ比べ



2019年、国際的な電波天文学のプロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」により、
史上初めて撮影されたブラックホールの姿が話題になりました。
そこで気になったのが「42マイクロ秒角」という見た目の大きさの小ささ。
どれくらい小さいものなのか、まったく見当がつかなかったので、可視化してみました。



2019年1月1日火曜日

冬の星座と、星の本当の明るさ、距離



冬の夜空を見上げた時の星々の輝き。
それぞれの星は、本当はどのくらいの明るさなのか?
目立たない暗い星はちっぽけな星なのか?

一年の中でも、最も明るい星が多く集まったオリオン座周辺を取り上げて、
本当の明るさ・距離をまとめてみた。
星を眺めるときのご参考に。

2018年9月17日月曜日

Spherical panorama projection

Spherical panorama drawing

The entire visual field can be mapped to the outer spherical surface. 
A sphere is the ideal medium for representing a whole landscape visible at a certain point.

全視野は球の内面とみなせるので、変換すれば球の表面にも投影できる。
ある地点から見えるすべての風景は、球の表面に描くことができる。







A: The entire visual field as an inner spherical surface 

The entire visual field surrounds a viewpoint like the inner spherical surface. The rectangular planer images, like a photograph or monitor screen, are the approximated substitute for a part of spherical field of sight.

A: 全視野は球の内面

全視野は観察者の視点を中心として、球の内面のように観察者を取り巻いている。
視界は球面なので、写真やモニターなど矩形の画像は、本来球面の一部である視野を近似的に代用したものにすぎない。

B: Spherical panorama projection

Entire visual field can be mapped to the outer spherical surface. 
The viewpoint locates outside of the sphere.

B: 全視野の球面上へのマッピング

球面状の全視野は、球の表面にもマッピングすることが可能。このとき観察者の視点は、球の外側に位置することになる。




C: Projected images on a spherical surface

When the image is projected on a spherical surface, a straight line in the real world is projected as a spherical geometric straight line, i.e. a part of a great circle.

C: 球面に投影した像

球面に投影された現実世界の直線は、球面幾何学的な直線(大円)として描かれる。

D: Projected images on a plane

When the image is projected on a plane, a straight line in the real world cannot be projected as a straight line except the lines that pass the center of the projection, e.g. the red and the blue lines in the chart. While the field of sight cannot avoid the distortion, the shape or apparent size of the objects cannot be preserved.

D: 平面に投影した像

平面に投影された現実世界の直線は、視野の中心を通る場合(例:図中の赤と水色の線)以外では、直線として描かれることはできない。像は歪みを避けられないので、正しい形状やサイズは反映されない。


E: Projected images on the retina

When the image is projected on a retina, every straight lines in the real world is projected as a spherical geometric straight line, therefore, we can perceive the straight line as it is. 

E: 網膜に映った像

網膜に投影された現実世界の直線は、球面幾何学的な直線(大円)となるので、私たちは直線を直線として認識できる。像は上下左右が逆転するが、脳がそれを正しい向きに補正している。




2018年2月25日日曜日

カーリングのリンクと宇宙

オリンピックを見ていて、どうしてもカーリングの
リンクのサイズ感が気になったので
どのくらいハウスが遠くにあるのか、どんな大きさなのかを実感するため
宇宙の天体同士の距離と比較してみた。

Watching at the Olympic curling game, I was very curious about the size of the rink. So I made this chart to see the size relation between the curling rink and the space. I hope you should find this helpful.


ft : feet=0.3048m 
au : astronomical unit =149,597,870,700 m (天文単位)
ly : light year=9,460,730,472,580,800 m(光年)

2015年1月1日木曜日

夜空ノ奥行キヲ観ル


2015年1月7~8日午後9時ごろ、月と木星がしし座の一等星レグルスのすぐ近くに見える。

夜空に見える天体は、すぐそばに並んでいるように見えても、
実際お互いの距離は、奥行き方向にとんでもなく離れているということがある。

この夜に並んで見える、
月と、木星と、レグルスはまさにそんな位置関係にある。

木星の距離を、手を伸ばした先のハガキの位置くらいに縮めてみたとき、
月と、レグルスはどれくらいの距離にあるのか、を図解して並べてみた。 

木星までの距離を40㎝程度にちぢめると、
月までの距離は0.2mmしかなく、
レグルスは450km彼方。

夜空の奥行きは、これほど遠く隔たった天体どうしが
平面上に並んでいるようにしか見えないほど、
人間の知覚できるスケールとはかけ離れている。






2014年10月14日火曜日

皆既月食中の月面から地球を見ると

皆既月食で見ることのできる赤い月は、

太陽光のうち、地球の大気を経由したものだけが月面にとどくことで、赤く染まっている。

その赤は夕焼けの色で、地球上のすべての日没地点の空を染めている赤だ。

地平線の下に沈んでしまった夕陽の残光は、そのとき遠く月まで届いて赤く照らしている。


月食の図解 (公転軌道を上から見た様子。距離と大きさの関係は滅茶苦茶)







もしも赤く染まった皆既月食中の月面から地球を見てみれば、

赤く輝く大気のリングが見えるはずだ。



それは、いったいどんな風に見えるだろう?



上の想像図のような、月から見た「ダイヤモンドリング」は、
実際に平成21年2月10日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星、「かぐや(SELENE)」 が「半影月食」中に撮影している。 
http://www.jaxa.jp/press/2009/02/20090218_kaguya_j.html 

このときは「半影月食」で、月が赤く染まるまでには至っておらず、
圧倒的な太陽光の下で、大気を通した赤い光は見ることはできなかった。 



さらに「食」が進行して、太陽が地球の影にかくれると、どうなるだろうか。

皆既中の赤い月は、きっとこんな赤い地球大気のリングに照らされているのではないだろうか。



そして次の疑問。 皆既中の赤いリングは、どのくらい明るく見えるのか?


下の写真は、2011年12月10日の皆既月食の、皆既中に撮影したもの。



この皆既中の月の明るさは、オリオン座の明るい星々よりもずっと明るく見える。

その差はどのくらいだろうか?


皆既中の月の明るさを、オリオン座の左足にあるリゲル(0等星)との光度と比べて、
ザッと4等級(約22倍)として、-4等級と仮定してみる。

すると、満月(-12.7等級)にくらべて、8.7等級暗い(約800分の1の明るさ)ということになる。

太陽の直射日光(-27.6等級)が照らしている満月と、
地球大気を通った光が照らしている皆既中の月(X等級)との明るさに800倍の差があるとしたら、
月を照らしている光源にも、800倍の差があるはずだ。

 X = -27.6 + 8.7 = -18.9

単純計算の結果、
皆既中の月を照らす地球大気のリングの明るさは、-18.9等級になる。

これは、地球から見た満月の明るさ-12.7等級の100倍以上の明るさだ。


相当にいい加減な見積もりだけれども、皆既中の月から見る地球大気のリングは、
地球から見た満月より、少なくとも数十倍は明るく見えそうだ。


満月よりもずっと明るく輝く赤いリング。
ちょっと想像しずらいけれども、ステージ上で赤いスポットライトを浴びているような状況だろうか。


上は、地球大気リングと、満月の明るさと大きさの比較想像図。


太陽がどんどん欠けていって、
(太陽光よりはずっと弱いものの)まばゆく輝く赤いリングが天に現れる。

こんな光景が、月面では皆既月食のたびに
誰にも見られることのないまま、
きっと繰り返されている。